COLUMNIST
ベタンヌ&ドゥソーヴ
ボルドー2007
複雑だが成功したミレジーム
2007年ボルドーを語るとき「質の劣った並の年」と「難しい年」を混同しないよう気をつけなければならない。嘆かわしいことに、フランスでも外国でも、浅はかで悪意あるデギュスタトゥールがこの間違いを犯している。
2007年は質の劣る並年ではないが、難しい年だ。だからあらゆる質のものがあるだろう。6月、7月、8月は畑の管理が非常に難しい気候で、栽培家はその時点ではあまり希望を持っていなかった。しかし、優秀な栽培家は猛威をふるったベト病と絶え間なく闘い勝利した。彼らは夏の間中、多くのスタッフを畑に配して(2haに1人の割合で)、葡萄樹に房がつきすぎないよう手入れを行い、熟さない葡萄を取り除き、樹の成長を止めて房が成熟するように作業した。これは葡萄が濃縮するために不可欠なことだった。このような努力を続けた人たちは9月初めから10月半ばまで6週間続いた好天に本当に報われた。
収穫の終わりに天候の恩恵を最も受けたのはカベルネのような晩成の葡萄だ。とりわけ左岸(メドック、グラーヴ)がこれによって良い葡萄を得ることができた。このことは早々と右岸の勝利を叫んでいた人達が全くのおろか者であったことを明らかにした。右岸が良かったとか、左岸が良かったかなどということは全くばかげたことで、教養のない愛好家か力のないプロを喜ばせるだけだ。
今年はとてもよいメルロのワインもあるだろう。素晴らしいカベルネ・フランで補うと更によくなる。しかし、ワインは正直だ。手入れや投資が十分でなければ、そのワインはおのずと粗野で魅力のないものになる。しかし、質の高いカベルネ・ソーヴィニョンとメドックの偉大なテロワールが組み合わさった時には最良の構造をもったワインが出来上がる。収穫の終わり頃のカベルネ・ソーヴィニョンは至るところで天然の糖度が12度を超え、タンニンや色素の量は前世紀終わりの大部分の偉大なミレジームと同等かそれを上回る水準だった。2007年を気に入ろうとそうでなかろうと、1996年よりも、あるいは1989年よりもボディがあり構造の強さがあるのだ!実際、偉大なメドックは補糖せずに13度以上あり、タンニンの指数はしばしば65を超えている!
夏の天候は悪かったが成熟期の合計気温は平均を上回った。これが葡萄の糖分が豊かであることの説明になる。葡萄の房と葉の量のバランスが取れていれば最終的な濃縮段階で糖度は上がる。しかし、果実の質は2000年や1990年ほどではない。赤い果実のニュアンスが多く出てくるが、黒い果実ではない。そして、温暖な年にでるワインの優雅さがあるが、暑い年のワインではない。
甘口ワインも満足のいくものになるだろう。10月第3週まで素晴らしい貴腐が広がった。最良の葡萄畑では収穫を急ぐ必要がなく、貴腐がきれいに広がった。辛口白ワインにも驚くようなよいものがある。赤よりずっと早く収穫されたものであっても稀なアロマの繊細さがある。
このミレジームのスターたち
Château Lafite-Rothschildポイヤック19/20
収穫の約38%がシャトーものになった。品種割合は通常通りでメルロが19%ブレンドされている。これが魔法の力を持つ純粋で極めて“抽象的”なカベルネの輪郭を包みこみ完璧なワインにしている。“ラフィット”の理想的なバランスの中に、力強さ、繊細さ、微妙な構造があり、石墨の極めて気品のあるニュアンスを伴っている。1988年に少し似ているが恐らくもっとボディがある。
Château Mouton-Rothschildポイヤック19~19.5/20
今年も再びムトンがメドックの中で最も完璧なワインである。この完璧さは先ず触覚の印象にある。樽が魅力的に現われ、杉や葉巻のニュアンスが感じられる。他のどこにもない洗練されたカベルネの奥行きがあり、特にそれが口の終わりに感じられる。そして、口に長く見事な純粋さがある。シャトー物の割合が最近の歴史の中では最も少ない年だ!
Château Léoville Las Casesサンジュリアン18.5~19/20
このミレジームの頂点にあるワインの一つ。最も高い水準で力強さと繊細さが融合している。その繊細さは特に10%のカベルネ・フランによるものだ。今年はひときわ素晴らしく洗練されたアロマがある。カベルネ・ソーヴィニョンも申し分なく、これによってより一層バランスの取れたワインになった。全体としてはそれほどアルコールの強さはなく、2006年のような非常にポイヤック的なワインではなく、より繊細なサンジュリアンのワインだ。
Château Lafleurポムロール18.5~19/20
スミレ、甘草、杉の複雑なアロマが素晴らしく、この年にないほどの充実した構造があり余韻が長い。小さな宝石のようなテロワールがこのミレジームの5指に入る偉大なワインを生み出した。
Château AusoneサンテミリオンGCC 18.5~19/20
力強さの競争とは逆に、繊細で上品、ボルドーで最も洗練された肌理細かいタンニンよって優雅な構造を持っている。絹のような口当たりとうっとりするような新鮮さがある。ワイン造りの師として知られるアラン・ヴォティエは技術の頂点を極めている。
Château d'Yquemソーテルヌ18.5~19/20
アルコール、酸、糖のバランスが模範的で、アロマが申し分なく豊か。完璧に醸造されたワインで、このクリュの評判に相応しいが、2005年や2006年ほど抜きん出ているわけではない。
Château Palmerマルゴー18/20
調和の取れたワイン。はっきりした味わいのある黒い果実のアロマがあり、素晴らしく滑らかな口当たりで、タンニンは信じ難いほど正確に抽出され余韻が長い。
Château Pichon-Longueville Baronポイヤック18.5~19/20
素晴らしく成功したものの一つ。ラトゥールタイプのワインを賞賛する人々に気に入られるだろう。力強いボディがあり素直で混じりけがない。密度が濃く高貴な杉とタバコの素晴らしいアロマが感じられ印象的だ。複雑でわがままなところは全くなく、真っ直ぐな完成したワイン。
Château Cos d'Estournelサンテステフ18/20
シャトーの歴史の中で最もカベルネ・ソーヴィニョンの割合が多い(85%)。このミレジームのすべてのメドック同様、力強さとアロマの強さが際立っている。ある人には過剰にさえ感じられるが、1年後には洗練され偉大なボトルになるに違いない。どっしりしているがとても気品がある。
Château Montroseサンテステフ18~18.5/20
このテロワールの典型的なワイン、閉じていて硬いが肉付きがある。タンニンが完璧に輪郭をなし口の終わりによいミネラルが感じられる。いつくかのシャトーとは反対に、全体の60%以上がグランヴァンになるだろう。
Château Beychevelleサンジュリアン18/20
はっきりした杉の香りを伴った素晴らしく気品あるアロマ、申し分なく洗練されている。ボディは充実して、すらりとしている。全体に偉大な繊細さと気品が感じられる。このシャトーの最良のワインを再発見できた。1953年や1959年に比肩しうるワインだ。
Château Leoville Bartonサンジュリアン18/20
ランゴア・バルトンより木の香りがはっきり出ていて、素晴らしい杉の香りがある。完璧なボディ、高貴なタンニンが感じられる。成功は、構造が早く熟すこのクリュ特有の特徴と関係している。いつも熟成最初の年の春からすぐにその良さが現われてくる。
Château l'Eglise-Clinetポムロール18/20
とても濃縮したワイン。この年にこうした特徴のワインはあまりない。それでもなお繊細でビロードのようなテクスチャーがある。繊細で目の詰まったタンニンとフレッシュな果実味。それゆえ、このミレジームの右岸のスターといえる。
Le Tertre RoteboeufサンテミリオンGC 18/20
洗練された優しい宝石のようなワインで甘美さと深みがある。溶けるような赤い果実のトーンとビロードのような感覚が続き、ややもろい感じだが余韻が長く正確で、調和がとれている。
Château PavieサンテミリオンGCC 18~18.5/20
オーゾンヌ、シュヴァルブランと並んで、このミレジームで最も偉大なワインの一つ。筋肉質ですらりとしていて強さがあり深みがある。パヴィ独自の力強さと洗練度。模範的なパヴィだ。
Château Coutetバルサック18.5~19/20
完璧なワインで素晴らしい柑橘のニュアンスが印象的だ。口の終わりに少し苦味がありそれが魅力になっている。味わいは輝かしく洗練されている。過去20年で最も成功したワインの一つ。
Château la Violetteポムロール18.5~19/20
新オーナー、カトリーヌ・ヴェルジェの2度目のワインだが、その才能の広がりを見せ名人芸といえる。この小さな宝石のようなシャトーは隣のルパン同様カチュソー村の上部に位置する。ワインは素晴らしいビロードのような構造があり、緻密でアロマの多様さは比類がなく新鮮で繊細なワイン。贅沢で魅力的なワインだ。
Domaine de l'Aコート・ド・カスティヨン16.5~17/20
このミレジーム最高のコート・ド・カスティヨン。右岸で最も洗練されたワインの一つ。素晴らしくフルーティで深みがありビロードのような感覚が続く。気品とエネルギーに満ちたタンニン。
Château Haut-Carlesフロンサック16.5~17/20
フロンサックでは他に類を見ないほど丹念に正確に造られている。タンニンと構造が印象的で、このシャトーでこれまで造られてきた最高のワインの質がある。これをサンテミリオン・クリュクラッセの中に入れて目隠し試飲したところ、上位4分の1にランクされた。右岸2007年産最高のワインの一つ。