2007ボルドー
プリムール評価
2007年産の気象条件は極めて異常で、ボルドーワインの出来は極めて不均質となった。
そして、葡萄の質を上げる為にこれまでにない努力が払われた。たとえば、シャトー・デュクリュ・ボカイユでは色づき期にピンク・ハーベストを行ったという。赤ワイン品種では色づき期に熟し方が足りない実は、他の実が黒くなってもピンクのまま残る。これを取り除く。この作業をしないと収穫時に熟していなくても収穫されるリスクが高い。
また、風通しをよくしてベト病や黴の繁殖を避け、日当たりをよくするために収穫前に全ての葉をむしり取ったところもある。
価格については1級シャトーやスーパー2級シャトーが価格を提示していないため、まだ大勢がどうなるのか予測が難しい。今のところソーテルヌやグラーヴの辛口白ワインは昨年より高め、メドックの赤ワインは昨年より5%下げている。しかし、ほとんどのシャトーはワインを全て売り切っていてストックがほとんどなく、財政的なゆとりがあることからかなり強気で、ネゴシアン側からの値下げ要求に簡単に屈しそうもない。
アラン・ヴォチエ氏
(シャトー・オゾンヌ)
今年は全員が畑に出てこれまでになく多くの仕事を行いました。その結果として申し分のない葡萄を収穫することが出来たことに大変満足しています。残念だったのは8月に1週間かなり強い雨にあったことです。これがなかったら2007年は例外的に素晴らしい年になっていたと思います。結果として「例外的な年」ではなく、「大変よい年」ということになりました。2005年産のような豊かさ、力強さはありませんが、果実味と繊細さが感じられます。過去のどの年に似ているかを言うのは難しいけれども、この10年のミレジームの平均を上回っていることは間違いありません。
2007年は畑の仕事に多くの時間を割かなくてはなりませんでした。特に、葡萄の質が均質になるよう多くの労力を割きました。収穫量を毎年、厳しく切りつめており、今年も32hL/haと平均的な水準です。
常にエレガントさを大切にしており、醸造での過度な抽出をさけています。特に、カベルネフランがワインに繊細さを与えます。幸運にもカベルネフランを支えるテロワールがオゾンヌにはあります。我々はパワーのあるワインを造りたいと思ったことはありません。繊細さ、そして口の中で味わいが長く持続するワインを常に求めています。
価格については我々の側から言うことはありません。非常に小さな生産家でほんの少量しか生産していませんから、販売は大シャトーの動向に追随するしかありません。
ジャン・リュック・テュヌヴァン氏
(シャトー・ヴァランドロー)
よいワインを造るには何よりもよく熟した葡萄を収穫することが必要です。しかし、2007年は8月末まで天候に恵まれず簡単ではありませんでした。幸い、9月に好天がやってきました。お陰で皆、遅くまで待って収穫することが出来ました。赤ワイン用品種を収穫したのは9月末から10月にかけてです。2007年産は成熟がゆっくりで、畑により、葡萄樹により成熟が大変不均質でした。ですから早く収穫した畑は植物的で、痩せたワインになりました。しかし、待って摘んだ葡萄はよく熟し、申し分のない質で、できあがったワインは柔らかく、繊細で絹のような滑らかさがあります。悪いミレジームのワインに感じる植物的な感触とか硬さはありません。1999年のような滑らかさを感じます。
2007年産の特徴は例年より早く開花し、一方収穫が大変遅れたことです。一般に開花から収穫まで110日と言われています。しかし、今年は130~140日もかかりました。開花から収穫までこんなに時間がかかったことはこれまで一度もありません。そんな中でこれだけのワインを造ることが出来たのは奇跡とさえ言えます。普通なら最後の段階で葡萄が黴びて傷んでしまいますが、我々は本当に質のよい葡萄を収穫することが出来ました。糖度、色、酸度ともに申し分ありませんでした。これだけ悪いコンディションの中でこれだけよいワインを造ることが出来るとは誰も考えていなかったでしょう。我々は本当に運がよかったと思います。
醸造にも気を遣いました。我々がいつも恐れているのは抽出のし過ぎです。特にカベルネフランを抽出し過ぎると固く、不快なワインになります。今消費者が求めているのは、絹のような滑らかで心地よく飲めるワインです。今年は例年より低い温度で醸造し、マセラシオンを長くしてキュヴェゾンを38日~39日に延ばしました。ワインは機械で生産する工業製品ではありません。料理と同じで、その時々の素材に合わせて調理法を変える必要があります。
2007年産は偉大な年ではないので長くは熟成出来ないと思います。素晴らしい出来の2005年などとはもちろん比べることは出来ません。比較的単純なミレジームで、長く熟成しなくても心地よくおいしく楽しむことが出来ます。これは消費者にとっても悪いことではありません。
2007年の問題は価格です。なんといってもユーロが強すぎます。これが、米国や日本にとって問題です。これまでプリムールの試飲はサンテミリオンの町の中で行ってきましたが今年からシャトー・ラ・ドミニックで開催することになりました。これはシャトー・ラ・ドミニックのオーナーであるクレマン・ファイヤ氏から、彼の持つシャトーの管理運営を任されたからです。クレマン・ファイヤ氏の仕事は2年前から手伝っていますが、今年からシャトー・ラ・ドミニックだけでなくシャトー・クレマン・ピション(メドック)、シャトー・プリウール・ド・ラ・コマンドリ(ポムロール)などファイヤ氏のワイン部門を全て管理することになりました。クレマン・ファイヤ氏は公共土木工事事業などを手広く展開しており、売り上げ20億ユーロ(3300億円)、従業印1万人を擁するファイヤ・グループを率いています。彼のワイン事業部門を伸ばすことに興味を持っています。価格についてはまだ出ていませんが、2006年を大きく下回ることはないと思います。