日本の葡萄

北海道ワインの葡萄畑で
稼働を始めたハーベスター
最高のタイミングで収穫が可能に

 北海道ワインの鶴沼ワイナリー(北海道浦臼町)に日本で初のグレープ・ハーベスター(葡萄収穫機)が入って、10月第一週の収穫から稼働を開始した。
  ハーベスターはフランスのニューホランド・ブラウト製(モデルVL620)。北海道ワインの人たちがつけた愛称は「ガンダム」。高さ3.6m、幅2.8m。高い車高の運転席に人が乗りこんだ正面からの姿が、あの機動戦士キャラクターに似ているからだ。
  140馬力、4輪駆動、ステアリング最大角度85度。運手席の軽やかなハンドル操作で、全長5.8mの大きな車体が狭いスペースでも楽に方向転換できる。車輪の高さを4輪それぞれ個別に調整できるので急な傾斜地での収穫作業にも不安はない。
  葡萄樹をまたぐまでは運転席でのハンドル操作によるが、いったんまたいだ後はセンサーが作動、オートクルージングシステムで畝のお終いまで時速5km前後で自動運行する。写真を撮るため、ハーベスターの前に出てカメラを構えていると、思いがけず早い速度で迫ってくるのに驚かされた。
  両側の車輪の間、おなかの部分にあるシェーカーシステム。葡萄樹(シンプル・コルドン仕立て)の両側を挟む形で細い樹脂製の棒(シェーキングロッド)が、細かく振動することによって、葡萄を揺すり落とす。振動の強弱も調整可能。葡萄の熟度に応じて、シェーキングロッドの振動強弱とハーベスターの運行速度を最適に組み合わせることで、葡萄を傷つけない収穫作業ができる。ハーベスターが通り過ぎたあとの樹からは、葡萄の実がきれいになくなっている。シェーキングロッドの位置は地面からの高さを調整でき、実のつく高さが異なる場合にも対応できる。
  いったんシェーカー底部に落ちた葡萄はコンベアでハーベスター上部にある2基の収納タンク(容量1.3t/1基)に送られる。その途中にあるディステマーで除梗、強力なクリーニングファンが葉などを吹き飛ばし、磁石が鉄製の夾雑物(誘引用の留め金クリップなど)を吸引する。収納タンクには除梗された果実とジュースだけが収まる仕組みだ。
  総面積450ha。うち栽培面積150ha。50区画以上に及ぶ鶴沼の葡萄畑はなだらかな斜面から、かなり急傾斜の斜面まで変化に富んでいる。農場長の今村直氏(農業生産法人・鶴沼ワイナリー社長)は、急な斜面も多い鶴沼の畑でハーベスターがうまく稼働するかどうか、心配もしたようだが、「ここの全ての園地に適合するマシンであることを、テスト段階で確認しました」と話す。
  導入費用は3600万円。平成17年度の経営構造対策事業の認定を受け、国からの助成金で費用の3分の1をまかなった。
  これまで人手による作業では、50人が8時間稼働して一日30tの収穫が精一杯。ハーベスター一台でこの作業を完璧に代替できるという。貴腐葡萄や一部の赤品種を除き、収穫作業のほとんどに対応できる。
  ハーベスターの導入で人件費を軽減できることも大きなメリットだが、今村氏は葡萄の状態がベストのタイミングをとらえ、手早く収穫できることを最大の利点にあげる。
  「雨が降りそうな雲行きになると、いつもハラハラしていました。特に香りの高い品種はどうしても雨が降る前に収穫したい。これからは24時間いつでも最高のタイミングで収穫することができます」。
  アタッチメントを付け替えることによって、スプレー作業や収穫前のリーフカットなどができる。今村氏が期待するのは剪定作業にも活用できることだ。11月末、雪が降りはじめてからの剪定作業はつらい仕事になる。このマシンの導入で、剪定の仕事も7割方は機械化が可能になると見ている。また、畑の拡大にともなう新植作業や改植作業も、このマシンで自動化できる。
  鶴沼ワイナリーのすぐ近くに2004年2月に完成した搾汁施設がある。処理能力は一日30t。除梗破砕機やフリーランジュースを取り分ける設備、バルーン式のプレス機も2基設置されている。ハーベスターが収穫した葡萄は直ちにここに搬入する。この搾汁施設には容量10tのステンレスタンクも4基あるが、ここで発酵まで持っていく考えはない。搾った果汁はタンクローリーで約1時間30分、小樽のワイナリーに搬送する。
  ここ数年の鶴沼全体の葡萄収穫量は500t〜600t。ワインの需要動向にもよるが、遠からず年間1200tの収穫量まで栽培面積を広げる計画で、ハーベスターの導入は畑での各種作業の効率化に大きく貢献するものと期待している。北海道ならではの広大な土地を活用し、機械化省力化によって低コストの葡萄生産に取り組むという北海道ワインの基本的な考え方が、また一歩前に進み出した。