地中海ワイン展示会 VINISUDヴィニシュッド
地中海ワインに見直し気運
フランス南部と地中海沿岸地域のワインを集めたワイン展示会、ヴィニシュッド2004が2月16日から18日まで、モンペリエの展示会場で開かれた。世界的にワインの生産過剰傾向が強まる中で市場争奪戦は熾烈を極めており、付加価値が高くクオリティ・プライスのワインを求める動きが強まっている。そんな中で、栽培条件に恵まれ、一定した質のワインを量産できる地中海沿岸地域のワインを見直す動きがはっきり出ている。期間中の入場者は2万2000人。
立ち寄ったブースの中から興味をもった幾つかの生産家を紹介する。
シャトー・ベルヴュ・ラ・フォレはフランス南西地方、AOCコート・ド・フロントネにある。近くにガイヤック、カオール、ビュゼなどがあるが、どちらかというとマイナーな生産地域だ。オーナーのパトリック・ジェルマン氏はアルジェリアに移民したフランス人を祖先に持ち、アルジェリア独立後フランスに戻り、1974年にドメーヌを設立した。畑は112haで作付品種はネグレット(53%)、カベルネ・フラン(16%)、カベルネ・ソーヴィニヨン(11%)、シラー(14%)、ガメイ(6%)。ボルドー大学のエミール・ペイノー教授の指導をうけ、ボルドースタイルのワイン作りを進めてきたが、最近、微酸化技法など最新の醸造法を取り入れ、新しいスタイルを目指している。
AOCカオールにあるクロ・トゥリグディナも質の高いワイン造っている。1830年から8代続く名門で、AOCカオールの牽引役。作付面積は65ha。土質は粘土・珪酸質、粘土・石灰質。カオールを代表するマルベックが主体。ドメーヌの代表的なボトル、プランス・プロビュスは平均樹齢50年を超えるマルベック(地元ではオセロワ、またはコットと呼ぶ)100%で造る。試飲した中で、2000年産はタンニンが良く溶け込み魅力がある。1976年もまだ十分果実味が残っていて楽しめる。キュヴェゾン20〜25日、熟成は新樽で18か月。カーヴで最低4〜5年熟成させ、サービスの数時間前にカラフに移しておくのが良い。
クロ・トゥリグディナでは、シュナン100%の遅摘み甘口白ワインも造っている。オーナーのジャン・リュック・バルデス氏がバルサック、シャトー・クーテの協力を得て試作したもので、樽発酵後、18か月熟成する。アンズや梨、リンゴの熟した香りとミネラル、フレッシュ感がある。ヴァン・ド・ペイの規格で、価格は19ユーロ。
高級アルマニャックとして定評あるシャトー・ド・ロバッドのオーナー、ジャン・ジャック・レグルグ氏は90年代半ばからワイン部門にも積極的に投資している。現在、傘下のグループLEDAを通してシャトー・カディアックなどを販売している。このうち、明治屋を通じて日本市場に紹介しているシャトー・ペロスを試飲した。LEDAグループが1999年に買収したシャトー。畑は26ha、作付品種はタナ(80%)、カベルネ・フラン(20%)。樽熟成は12〜18か月、新樽25%。タナ100%で造られたシャトー・ペロス・クヴァン1997年、2000年は、しっかりしたタンニン、心地よい果実味、良く溶け込んだ樽の味わいが調和を保ち、エレガントさを表現している。最良のマディランの一つだろう。
最近話題になる南西地方の産地の一つにジュランソンがある。ここで、ダイナミックな活動を行い、質で定評を持つのがドメーヌ・コアペだ。1970年代までジュランソンは殆ど振り返る人のないワイン産地だったが、ドメ−ヌ・コアペのオーナー、アンリ・ラモントゥー氏は究極まで収穫を遅らせ、ピュアで複雑な味わいをもつ甘口白ワインとしてジュランソンを蘇らせた。ドメーヌの畑40ha。グロ・マンサン(55%)は主として辛口に、プチ・マンサン(45%)は遅摘みで甘口にする。
ジュランソンの甘口白ワインは10月末から11月の始めに収穫する。それまで房を株に残し、乾燥して糖度が上がるのを待つ。ソーテルヌのように貴腐菌による濃縮はジュランソンのワインにはない。ドメーヌ・コアペでは特に、究極の遅摘みを目指しており、クリスマス以降、一部は年を越え1月に入ってから収穫する。ワインは純粋でオレンジの砂糖漬け、蜂蜜、アルコール漬けのプラム、オーブンで焼いた果実などの香りが交じり合い、口に長く残る。シロップのような単純な甘さでなく、十分な酸味によって支えられた新鮮さが特徴だ。販売価格は辛口が10〜21ユーロ、甘口が12〜130ユーロ。
ポイヤックのシャトー・ランシュ・バージュのオーナー、ジャン・ミッシェル・カーズ氏は2002年の春、ミネルヴォワ・ラ・リヴィニエールに計150haのドメーヌを購入し、カーズ氏の名を冠してロスタル・カーズと名付けた。今のところ作付面積は60haで、残りはオリーヴ畑(25ha)と石灰質土壌の荒地(ガリーグ)だが、荒地はかつてのブドウ畑で、開墾すればさらに60ha程度ほど拡張できる可能性をもっている。また、隣接する英国のロダー・エデン氏のもつ醸造所を購入し、本格的な生産体制を整えた。
ここでは自家ドメーヌ物、ロスタル・カーズのほか、シルキュスのブランド名でヴァン・ド・ペイとAOCラングドックを生産し、ボルドーのブランドワイン、ミッシェル・リンチとともにジャン・ミッシェル・カーズ・セレクションの品揃えの一つとしている。ヴィニシュッドの期間中、ジャン・ミッシェル・カーズ氏はプルセル兄弟が新たに開いたビストロ、コンパニ・デ・コントワールに関係者を招き、ロスタル・カーズの紹介を行った。
この席でカーズ氏は「オスタルは南仏の古語で家族とか家の意味。家族経営のドメーヌに相応しいものだ。また、ブランド名にシルキュス(CIRCUS、英語ではサーカス)を採用したのは毎日、規律を持って練習するサーカスとワイン造りの原則が同じだと考えたからだ。また、ペトリュス、ドミニュス、フォリュミュス、プリミュスなどが既に使われていることもある」と語った。
シルキュス2002を幾つか試飲したが、繊細で、こなれたタンニンを持っている。また、ミネルヴォワ2002はシラーの個性を上手く生かし十分複雑で、後口も長い。一方オスタル・カーズは樽香が溶け込むまで少し待つ必要がある。
シャトー・ムトン・ロチルドを経営するバロン・フィリップ・ド・ロチルド社はラングドック、リムーの栽培家組合(ヴィニュロン・デュ・シュール・ダルク)とともに2000年3月にバロナルク(BARON’ARQUES)を創設した。目的は、ラングドックの葡萄栽培技術とバロン・フィリップ・ド・ロチルド社のワイン造りのノウハウを組み合わせ、ボルドーのクリュクラッセのワインに匹敵する質の高い赤ワインを生産することにある。
リムーの畑は標高200〜600m。地中海と大西洋双方の影響を受け、変化に富む地域で古くから発泡性ワインの産地として知られてきた。1980年代に栽培家500人で組織するヴィニュロン・デュ・シュール・ダルクが中心となって約3800の畑を6つの基準(気候、土壌、標高、傾斜、日当たり、地理的な位置)で調査した結果、大きく4つの異なるテロワールに分類できた。これは、主として白ワインの個性を際立たせ、質の向上に資することになり、1989年から始まったトック&クロシェの競売会の成功につながった。同時に、この栽培適地の研究過程でリムーには赤ワインの適地があることも明らかになった。
そんな中で、合弁事業バロナルクの話が持ち上がった。資本金は100万ユーロ(約1億3500万円)で、持株比率はバロン・フィリップ・ド・ロッチルド社65%、ヴィニュロン・デュ・シュルダルク35%。バロナルクという赤ワインは、ボルドーとラングドック双方のメリットを最大限に生かすことを目指している。使用品種もボルドー品種(メルロー、カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン)とラングドック品種(グルナッシュ、シラー、マルベック)を6対4から7対3程度の割合で組み合わせている。5つのミレジームを試飲したが年によってかなり差がある。今後、使用する収穫葡萄の質が上がり、自前の醸造設備を100%使用するようになればさらに安定した質になるだろう。フランス国内での販売価格は30〜40ユーロ。
ルシヨン地方のドメーヌ・デュ・マス・ボーは1997年にセルジュ・ボー氏が購入し、情熱的なワイン造りを行い注目されている。作付面積は12ha。最初の収穫が1999年で、2002年の春に2000年産と2001年産の一部を瓶詰めして上市した。生産の中心はAOCコトー・デュ・ラングドックとヴァン・ド・ペイ・カタラン。試行錯誤の段階だが、収穫量を切り詰め、丁寧なワイン造りをしており、ピュアな味わいがある。新しいマーケティングの視点もあり面白い。
ヴァン・ド・ペイ・ドック生産組合は1987年の創設で比較的新しいが、90年代以降ダイナミックな活動を行いフランスのヴァン・ド・ペイの価値を高めた。ヴィニシュッドでは、味のタイプ別に比較試飲できるコーナーを設け、興味深い展示を行った。ヴァン・ド・ペイ・ドックは75%が輸出で、2002年/2003年の輸出量はボルドーを上回る300万h・(約4億本)に達した。品種名を前面に出して販売するいわゆるセパージュ・ワインが主体で、フランス国内で生産されるセパージュ・ワインの約9割がここで造られている。
フランスで最初にセパージュ・ワインの生産、販売を始めたスカリ家がラングドックの港町セートでワイン販売会社を起こしたのは1974年。当時、この地域の殆どのワインは生産家の名前を記さず、あらゆる品種をブレンドして造ったテーブルワインだった。そんな中で、ラングドックの潜在力を表現し、世界的なマーケティング戦略に添うものとして1982年にセパージュ・ワイン、フォルタンを発表した。フランスの伝統的なAOCワインのコンセプトとは全く異なるこの製品は大きな議論を呼んだが、1980年代以降、大きな消費のうねりを呼び起こし、年間100万ケースを出荷するまでに成長している。
ロベール・スカリ会長と二人三脚でスカリを支えるフィリップ・ジロドン社長は、ヴィニシュッドのブースで「我々が造り出したヴァン・ド・セパージュの市場は世界中で益々重要な位置を占めるようになっている。スカリは2000年以降、コート・デュ・ローヌにも進出しているが、将来もヴァン・ド・セパージュを主体に活動を進める戦略に変わりはない」と語った。