ローラン・ペリエ社のブランド・ガーディアン
アレクサンドラ・ペレイル・ドゥ・ノナンクールさん
父から娘へのメッセージが託された
「キュヴェ・アレクサンドラ・ロゼ」
「フランスの結婚式の披露宴ではどこでも父親がビッグスピーチを行い、この結婚がどんなに誇らしいものであるかを語るのですが、父は一切スピーチをしませんでした。長女の私が結婚することに父は感無量、その想いはとてもスピーチでは語り尽くせなかったのでしょう。でも、そこで振る舞われた『グラン・シエクル・キュヴェ・アレクサンドラ・ロゼ1982』を初めてみて、何も知らされていなかった私はびっくりしました。それを口にしてみてすぐに、このシャンパーニュには父のわたし達に対する愛情とともに、情熱を持ってシャンパーニュ造りを受け継いでいって欲しいとのメッセージが込められていることに気づきました」
ローラン・ペリエ社のプレステージ・キュヴェ『グラン・シエクル』の新しいシリーズ商品、「キュヴェ・アレクサンドラ・ロゼ」はこうして劇的なデビューを果たした。1987年のことだ。ロゼ・シャンパーニュはとても繊細で、一般に女性的な飲み物だと思われている。しかしこのキュヴェ・アレクサンドラは女性的であると同時に男性的な面も備えている。エレガントでやわらかなピンクの色調とともに、パワフルで複雑なアロマ、骨格のしっかりとした味わいが特徴であり、ローラン・ペリエ社のシャンパーニュ造りの歴史とノウハウが凝縮されている。
シャンパーニュのロゼは赤ワインをブレンドして造られることが多いが、キュヴェ・アレクサンドラは“セニエ”の手法でつくられているのがユニークなところ。短い期間マセレーションされ引き抜かれたピノ・ノワールの果汁は、圧搾の際に少量のシャルドネが加えられる。葡萄の構成比はピノ・ノワールが80%以上。アンボネやブージーなど100%格付けの葡萄だけが選別され使われている。
優れた年にだけ極く少量つくられるこのヴィンテージ・シャンパーニュは、少なくとも6年以上熟成された後出荷されるのが基本コンセプト。1982年を皮切りに、85年、88年、90年、97年とこれまでにつくられたのはわずか5ヴィンテージ。1997年産も昨年12月に初リリースされたばかりで、足掛け7年間セラーで寝かされていたことになる。
シャルドネを主体に、フレッシュ&エレガンスな味わいの「ブリュットLーP」、ドザージュを全くしない「ウルトラ・ブリュット」、優れた3つのヴィンテージをブレンドしたプレステージ・キュヴェ「グラン・シエクル・ラ・キュヴェ」など、ローラン・ペリエ社は戦後のシャンパーニュ業界をリードする新しいスタイルの製品を次々と開発してきた。そしてその哲学を、文化や産業の育成への援助という形でも広めてきた。各界で素晴らしい業績を残した人々を顕彰する「グラン・シエクル賞」は今年でちょうど40回目を迎えるし、個人経営のワインショップを対象とした隔年開催の「世界最優秀カヴィストコンクール」を2003年からスタートさせている。第一回のコンクールでは日本人の金井麻紀子さんが決勝8名のなかに残る健闘ぶりを見せたが、次回の大会ではフランス語だけでなく各国語での質疑応答を認め、より国際的な大会をめざしていくという。
大学で建築学とインテリア・デザインを専攻し、化粧品業界で活躍していたアレクサンドラさんは結婚した年、1987年にローラン・ペリエ社に参画した。「今の私の仕事は、人々にローラン・ペリエの哲学や価値を理解してもらうことです。価値というのはシャンパーニュ造りを行っているチームの価値であり、製品の品質の高さのことです。これまで築いてきたブランドのイメージを守り発展させていくことがわたしの仕事です。だから人々は私のことをブランド・スーパーバイザーとか、ブランド・ガーディアンと呼んでいます」
総帥ベルナール・ドゥ・ノナンクール氏が1949年に会社の経営を任されて以来、ローラン・ペリエはシャンパーニュで今では数えるほどしか存在しないファミリー・カンパニーとして運営されてきた。1999年6月に株式の一部を公開し、財務体質の強化を図ってきたが、ベルナール氏自身はいまも監査役会の会長を務め、アレクサンドラさんと妹のステファニーさんも取締役として活躍している。グループ全体としてはシャンパーニュ業界のなかで4位にまで成長し、更に、今年はジェンメイヤー、ボーメ、オウディノーといったブランドを擁するシャトー・マラコフグループを傘下におさめた。
ローラン・ペリエの伝統と革新をこれからどのように図っていこうとしているのか。
「シャンパーニュの哲学とその味わいを理解するにはある種の情熱が必要です。正直言って、私は25歳になるまでシャンパーニュの味がわからなかった。シャンパーニュに囲まれて育ったにも拘わらず、自分の舌がそれを理解できるように訓練するには時間と情熱が必要だったのです。ともに働く人々との良好な関係、消費者との良好な関係を保てればどのような時でも困難を乗り越えられます。それを産み出すのは自分のなかにある情熱でしょう。他のワインビジネスに手を広げることなく、その情熱をシャンパーニュに集中させることができれば、伝統をまもりつつ革新を図ることも出来るはずです」と、アレクサンドラさんは締めくくった。