No.60 Mar. 2002
winemaker in the limelight
 


フレーバーの一貫性を求める
新しいキャノピー・マネージメント
ファーミング・フォー・フレーバース

マイク・ベンジガー氏
ベンジガー・ファミリー・ワイナリー醸造家兼社長


 マイク・ベンジガー氏が令嬢エリンさんを伴って5度目の来日をした。ソノママウンテンにあるベンジガー・ファミリー・ワイナリーはデメテールによって正式に認証された「バイオダイナミック」を実践するカリフォルニアの数少ないワイナリーのひとつだが、近年、日照量と葡萄のフレーバーとの関係を研究している。その成果に基づきファーミング・フォー・フレーバース≠ニ名付けられた新しいキャノピー・マネージメントを開発した。以下、ベンジガー氏の説明を紹介する。

 我々は、葡萄樹にあたる日照量を調節することで葡萄果の成育状況と芳香成分をコントロールし、それによって望むとおりのフレーバーをもった葡萄が収穫できるようになる特別な手法を開発し実践している。この方法は過去15年間に亘る研究の成果であり、これを「ファーミング・フォー・フレーバース」と名付けて登録商標をとった。
 まず、日照量と暖かさの関係によってそれぞれの品種の葡萄がどのようなフレーバーを産み出すかを研究しチャートとしてまとめた。これはキャノピー・マネージメ
ントの一種であり、葡萄に対してちょうど日除けをかざすようなものだ。葡萄の葉を茂らすことによって葡萄が日陰に入る状態になり、より冷涼なミクロクリマの中で栽培されることになる。この結果、ヒュメ・ブランの例で言えば葡萄のフレーバーはピーマンやセロリ、ハラペーニョなどの要素が強くなる。一方、葉を落とせば、葡萄にとってはより暖かい生育環境ができメロンやグレープフルーツの香りを強調するこ
とができる。
 このリーフ・キャノピーはちょうどブライドの開け閉めをするようなものだ。それぞれの葡萄のフレーバーの特徴は、全てマイクロクライメットに因っている。一番小さい単位のマイクロクライメットはキャノピーの下に存在する。従って、このキャノピーの下ではピンポイントでマイクロクライメットをコントロールすることができる。このマイクロクライメットを操作することで、(日照とフレーバーの関係を7段階で示す)チャートのうち、左右に2小間分なら動かすことができる。
 たとえば、ロシアンリバーのように涼しすぎる気候条件下にソーヴィニヨンの畑があるとすると、そこではセロリやピーマンのようなヴェジェタルな香りがでやすい。
そこで、葉を落として日照量を上げればフレーバーは2小間進んで麦藁のようなスタイルまでもっていくことができる。一方、アレキサンダー・ヴァレーのように温暖な気候条件の下では、葉を茂らすことによって、葡萄のフレーバーは本来の麦藁の香りが勝ったものから、パイナップルやグレープフルーツの特徴をもったところまで動かすことができる。
 気候が涼しい時には葉を落とすことで、より暖かい環境を作り出すことができるし、逆に暖かい年には葉を茂らすことで冷涼気候を人為的に作り出すことができる。
こうすることによって、気候の変化に影響されることなく、めざすところのフレーバーをもったワインを毎年同じように作り出し、ワインのスタイルの一貫性を実現す
ることができる。
 我々がめざしているソーヴィニヨン・ブランは良い酸をもっていて、新鮮な青草、ハーブ、そしてリンゴやメロンのようなフレーバーをもったワインだ。
 シャルドネの場合は果実味が豊かなワインをめざしている。我々のシャルドネの畑は冷涼地帯のカーネロスにあるので、どちらかといえば、葉を落として暖かい気候を生み出す必要がある。葉が多けば青リンゴのアロマが増え、逆に葉をたくさん落とせば洋梨や桃の香りが出る。チャートの中間辺りであれば、パイナップルや柑橘系の香りが強くなる。しかし我々がシャルドネでめざしているのは、トロピカル・フルーツやパイナップル、レモンのフレーバーだ。
 このチャートを活用することにより、契約農家はどのタイプの葡萄をつくるかを、我々と一緒になってめざすことができる。こうしたリーフ・キャノピーの作業は、
ヴィンテージの性格がある程度分かってきた段階でなるべく早くスタートしなければならない。その作業が遅くなればなるほど、フレーバーを変える試みは危険を伴うからだ。
 我々が登録しているのは、ファーミング・フォー・フレーバーズ≠ニいうネーミングと、品種ごとのフレーバーの変化についてのチャートである。もちろん、カリ
フォルニアの他の畑でもキャノピーマネージメントは行われているが、それは主として病害虫対策としてだ。私たちのキャノピー・マネージメントの狙いは、フレーバーの一貫性を求めるためのものであり、それをチャートを使って行っているところが他のワイナリーと区別されるべき点だ。

 

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