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ここで、前回もちょっと触れてはいますが、新世界のVitis viniferaの伝播について概観します。
まず一般論としていえることは、産地形成が或る段階に達するまでは、どこの産地でもブドウ品種の導入は幾度となく行われます。それらの事蹟が正確に記録されて残るのは稀ですが、それは今日でも間断なく続いていることで、AOCなどの法的規制がその産地に植栽できる品種を限定しない限り止むことはありません。
こうした重層的なブドウ品種のdiffusionを前回は文明化という視点からとらえてお話しました。
余談になりますが、その具体的な事例をひとつだけ述べておきます。
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1932年7月
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1984年7月
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1996年8月
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| サンジョヴェーゼ |
70〜80%
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75〜90%
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75〜100%
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| カナイオロ・ネーロ |
10〜30%
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5〜10%
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10%以下
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| トレッビアーノ・トスカーノ |
10〜30%
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2〜5%
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6%以下
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| マルヴァジア・デル・キアンティ |
10〜30%
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2〜5%
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6%以下
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上表はキアンテイ・クラッシコのアッサンブラージュを規定した法律がどう改正されていったか示したものです。
ここに示された数値を見る限りキアンティ・クラッシコの特性は、近年サンジョヴェーゼの個性そのものへ重ね合わされていくかのように思われます。軽く、口当たりの柔らかな若飲みタイプから、重厚で熟成した深い味わいを期待する酒質へ、キアンティ・クラッシコの変貌は明らかです。これは、サンジョヴェーゼという品種に、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローのごときポテンシャルを認め、トスカーナの地酒を文明化の路線へ乗せたことにほかなりません。
ここまでは、銘醸地のブドウが特定の品種へ収斂していく普遍的な現象で、品種の拡散は重層的である、という話とは関係がありません。問題はこの割合を定めたあとに続く補足の規定にあるのです。1984年の場合は次のようになっています。
「産地推奨または認可の補助的な赤ブドウ品種:10%以下」
こうした特例規定は、往々、その産地に栽培されている過去の植栽品種の収穫を救済するための経過措置である場合が多いのです。例えば、ボルドーACの白ワインの規定には、許可された品種、セミヨン、ソーヴイニヨン・ブラン、ムスカデルのほかに補助品種として、ユニ・ブラン、コロンバール、メルロー・ブラン、オンデンなどを総量の30%まで使うことが認められています。これは、AOCが制定された当時、これらの品種が淘汰されずにかなり残っていたからです。
しかし、キアンティの場合はいささか事情が違うように思われます。なぜなら、1996年の改正ではこの特例の混和割合が10%から15%に引き上げられたのです。100年以上前、リカソーリ男爵が造り上げたといわれる4品種混合のキアンティの性格がサンジョヴェーゼ100%へ変わりつつあるなかで、新しく割り込んでくるものがあるからこそ、それを容認して法律を改めたとしか考えられません。明らかに、この時期、幾度めかのdiffusionがあったのです。
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