余話。その2
                                                  
品種を巡るパラドックス
-カベルネとシャルドネは究極の品種なのか(2-3)−
 
 

余談がちょっと長くなりました。

 実は、ここで指摘しておきたいことがあったのです。それは、シャルドネがブルゴーニュで最初から輝いていた品種ではない、ということです。 同じことは、ボルドーのカベルネ・ソーヴィニヨンについても言えます。いま世界的に広がったこのニつの品種は、確かにボルドーの赤、ブルゴーニュの白の酒質によって高品質ワインの原料たるべき素質を保証されたかに見えます。そして、それ故に拡散していくのだと。…‥どうも、そういう解釈では、ワインの在りようは読みきれないのではないか。漠然とですが、私はそう思っているのです。

 そこで、話を本題へ戻します。

 ジャンシス・ロビンソンは、さきに紹介した "Vines,Grapes and Wines"(1986年)を上梓してから丁度10年たった1996年、袖珍本ながらなかなか興味探い"Guide to Wine Grapes”を出版します。ここに1990年前後の世界の品種別栽培面積が掲載されています。前者の表(前月号参照)と対比すると、1980年から10年間に、世界のブドウ畑はどう動いたかがわかります。正確に申しますと、フランスの場合は1979年と1988年の農業センサスによっています。各国のデータに多少の時期のズレがあると思われますが、グローバルにブドウ栽培の傾向が10年間どう変化したか、ふたつの書物から見やすくまとめてみました。

「主要ブドウ品種栽培面積1980〜1990推移」がそれです。(下表)

主要ブドウ品種栽培面積1980〜1990 W:白/R:赤 (単位:1,000ha)

1980

 

品種名

面積

1

AIREN W

476

2

GRANACHA TINTA R

331

3

RKATSITELI W

267

4

TREBBAIANO W

262

5

CARIGNAN R

221

6

CRIOLLA R

145

7

CABERNET-S R

135

8

MUSCAT W

122

9

MONASTRELL R

113

10

BARBERA R

102

11

BOBAL R

95

12

MERLOT R

90

13

SEMILLON W

75

14

RIESLING W

66

15

VERDICCHIO W

65

16

WELSCHRIESLING W

64

17

MACABEO W

58

18

COT R

43

19

XAREL-LO W

43

20

GARNACHA BLANCA W

41

 

1980

 

品種名

面積

1

AIREN W

432

2

GRANACHA TINTA R

318

3

CARIGNAN R

244

4

TREBBAIANO W

203

5

MERLOT R

162

6

CABERNET-S R

146

7

RKATSITELI W

129

8

MONASTRELL R

118

9

BOBAL R

106

10

TEMPRANILLO R

102

11

CHARDONNAY W

99

12

SANGIOVESE R

99

13

CINSAUT R

86

14

WELSCHRIESLING W

76

15

CATARATTO W

75

16

ALIGOTE R

72

17

MUSCAT W

67

18

PINOT NOIR R

63

19

SAUVIGNON-B B

61

20

CHENIN BLANC W

54

 O.I.V.の統計によれば全世界のブドウ栽培面積は、1980年、1,010,4万haから、1990年、869,8万haへ減少しています。約14%、これは世界最大の栽培面積を持つスペインのブドウ畑が10年間で消滅してしまったことと等しいのです。これはワインの消費量がワイン文化圏の諸国で減少を続けているためです。

 表は栽培面積の多い品種上位20傑を序列化して示しています。その面積の合計は、1980年、281,4万ha。1990年、271,2万haです。この減少率は僅か3.6%に止まっています。淘汰は選択的に進んでいるのです。その代表的事例はクリオージャ(チリではパイス、アメリカではミッションと呼ばれる強健、豊産の品種)です。

 栽培技術が向上して、栽培が容易であることよりも、ワインとしてすぐれたものへ、品種の交替が急激に進んだのが、この10年でありました。そして、この流れは加速されこそすれ、鈍化したり、停滞したりすることは、決してないでしょう。それは、消費構造の変化、すなわち日常ワインの衰退と、高品質ワインに対する関心の高まりにも照応しています。品種間の動きを個別に見てみましょう。



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