2003年ボルドー・プリムール
レポート
「2003年産ボルドーワイン」(要旨)

ボルドー大学醸造学部
ギイ・ガンベルトー教授
パスカル・リベロ・ガイヨン教授

 2003年は冬の凍傷被害のあった1956年、春の霜害のあった1991年のように猛暑の年としてワイン関係者の記憶に残るだろう。さらに成育が早く、収穫量が少なかった年としても思い出に残るだろう。技術者には収穫日の決定、糖度の高いジュースの発酵、酸度の調整、さらにはマセラシオン、マロラクティック発酵時の気遣いなどさまざまな問題を提示した年でもある。
  2003年産の特徴の一つは成育が早かったことで、黒葡萄の開花、色づきは過去10年平均に比べ約1週間早かった。特に、フェノール化合物の成熟を過去の平均と比べると成育の早さが際立っている。この20年間、成育は徐々に早まり、ここに地球温暖化の事実を見ることが出来る。

 開花時期は1990年、1989年に近く、1997年よりやや遅かった。開花は比較的長くかかり不均質だった。これは6月2日〜7日にかけて47oの雨があったからだ。

 6月は一時的な猛暑で、太陽が照り暑かった。6月24日の夜、雹を伴った雷雨がアントル・ドゥー・メール、プルミエ・コート・ド・ボルドー、グラーヴ、サンテミリオンなどを襲い、約6000haに被害をもたらした。7月は例年より暑く、雨量は平年並みで7月1〜3日と15日、16日に集中的に降った。8月は温度だけでなく、暑さの続いた日数でも例外的だった。8月3日〜13日までの11日間は35℃を超え、そのうち何日かは40℃に達した。雨は例年より少なく、8月下旬に降った。

 6〜8月の気象状況を平年と比べ、積算温度、気温の高かった日数、日照時間の多さが際立っている。また、降雨量も平年を上回っている。2003年は気温が特別高かったが、水分が完全に足りなかったというわけではなく、葡萄樹は十分な成育条件を確保できた。しかし、この降雨量はボルドー郊外、ヴィルナーヴ・ドルノン農業研究所に設置した降雨計によるもの。ボルドー地域ではこの時期の雨は雷雨によるもので、その量と場所が極めて不規則だ。地域によって気象状況が異なり、ある地域では水不足で葡萄樹の成育がストップした。9月は暑く雨は少なかった。そして、その雨の8割が9月初旬に集中した。

 葡萄樹が水分をどれだけ得られるかは、春に土中にどれだけ水分を溜めていたかや夏の降雨量、気象状況、葡萄樹の仕立て方などによって異なる。また、土壌による違いもある。例えば、例年湿っている冷たい土壌では、6〜8月にかけて雨が少なかったので乾いた状態になり、それによって葡萄はよく熟した。反対に、非常に乾いた土壌では葡萄樹が深刻な水不足に陥った。その結果、乾燥して葉が落ちたり、実が乾いたりした。ある畑では色づき期にウォーター・ストレスに陥り、成長が停止し年老いた葉はおちた。しかし、若い葉や成育中の葉で光合成は行われた。それが糖度の強度の凝縮をもたらし、さらに蒸発によって一層濃縮した。また、気温が上がったことでリンゴ酸の減少に拍車がかかった。

 赤ワインの組成を早熟だった過去の幾つかの年と比較すると、2003年は糖度が例外的に高く、酸度がとりわけ低いことが分かる。収穫日の選択が大変難しかったのも2003年の特徴である。というのは高い糖度と低い酸度のバランス、アロマの質とタンニンのバランスを見つけなくてはならなかったからだ。また、土壌の質によって同じ品種でも葡萄の組成が不揃いとなったことを考慮しなくてはならない。

 酸度が低かったことから白ワインやメルロでは時に補酸する必要があった。その場合、正確に必要量を得るために、一度にではなく、発酵中に徐々に加えることが求められた。白品種の成熟は驚くほど早く進み、早熟畑のソーヴィニョンの収穫が8月15日頃から始まった。糖は豊かだが、酸が少なく補酸が不可欠だった。白品種は一般的に乾燥した年がそうであるように、粘土石灰土壌で成功した。小石土壌の葡萄はボルドーでは異例の高温に耐えることが出来なかった。

 2003年産辛口白はヴォリューム感があり、しなやかだが、新鮮さ、アロマの力強さに欠ける傾向にある。甘口白ワインの収穫は例外的に早く9月末に始まり、非常に短期間で終わった。8月の例外的な暑さで濃縮した葡萄に9月初旬の暑さと雨が幸いして貴腐菌が繁殖した。そして、午前中湿りがちで、午後は非常に暑くなり、太陽が照る気象条件の中で、短期間で糖分が凝縮した。時には、ジュースの潜在アルコール分が25%にも達した。極めて異例な気象条件だったことから、収穫回数は少なくて済み、ある栽培家達は一度に全体の4分の3を収穫した。甘口白ワインは力強く、厚みがあり、繊細なアロマと少し焦げたようなニュアンスがある。長く熟成できるワインになるだろう。