No.60 Mar.. 2002
Overseas News
 


FRANCE
ボルドーのスキャンダルに禁固18か月求刑


 AOCボルドーワインと南仏産ワインをブレンドし、これを「シャトー元詰ワイン」として販売した容疑で起訴されたジャック・エメール氏をめぐる審理を進めていたボルドー地方裁判所で、検察側は先ごろ禁固18か月を求刑した。
 このスキャンダルの発端は1987年に競争消費不正行為取締局(DCCRF)が当時小規模ネゴスを経営していたエメール氏のピアン・メドックにあるセラーを査察した時に遡る。この時の査察で数千hlに及ぶワインが偽のシャトー名、収穫年、AOC名で販売されていた事実が判明。検察当局は同氏をAOC法違反、詐欺および虚偽宣伝の容疑で起訴した。告訴の対象はエメール氏のみにとどまらず、クルチエを介してエメール氏から数10万本とされる「シャトー元詰ワイン」を購入した6社の大手ネゴシアンにも及んでいる。
 一年間の生産量が600万hlに達するボルドーのAOCワイン。1994年〜97年の間に販売された偽の「シャトー元詰ワイン」は多く見積もっても1万hlといわれ、その量は微々たるものだが、大手ネゴスを巻き込んだ今回の事態は、ボルドーワイン全体のイメージに大きなダメージを与えている。
 エメール氏はボルドー地方メドックのワインに、ラングドック・ルーションやコルビエールなど南仏産のヴァンドターブルやヴァンドペイを混ぜた事実を認めてはいるものの、「出荷したワインの数量はそれほど多くはなかった。オード県産のヴァン・ド・ペイはAOCメドックやAOCオー・メドックに(ブレンドすることで)粘りや色を付与する利点がある。事実、(私が)出荷したワインに対して、顧客であるネゴシアンからクレームを受けたことはなかった」と自らの違反行為を自己弁護、情状酌量を求めていた。
 これまでの審理過程からすると、エメール氏は買い手に内緒で他のワインを混ぜていたようではあるが、彼からワインを購入したネゴシアン6社への瓶詰代金の請求書にはボトリングした場所としてピアン・メドックのセラーが明示されていたり、ネゴス6社から送られたラベルやコルクの送付先が同じくピアン・メドックのセラーであったり、また酒税免除搬送許可証にも出荷場所として同セラーが明記されていたことが判明している。
 これらの事実からDCCRFは、「買い手のネゴシアンが取引の際にワインに添えられた書類の内容から、事の真相を知らなかったことはありえない」と結論づけている。
これに対して、一部のネゴシアンはうかつであったことを認めているが、刑事上の責任を否認している。
 この事件の背景には、そのボトルがどこで造られたワインか、そのワインが本物であるかどうかということよりも、低価格でそこそこの質のワインを求める大規模販売店の動きが影響しているとも言われる。また、このワインを知らずに買っていた大手ネゴシアンに対しても、一定の質的水準にあるものなら、どこで生産されたワインかには余り頓着していないのが実情だとする指摘もある。
 さらに、「フランスの法を犯したという意味では確かに不正だが、異なる産地のワインをブレンドすることは米国やオーストラリアなどでは日常化しており、結果的に質の高いワインが提供されたとするなら、消費者が不利益を蒙ったとは必ずしもいえない」、AOC法を見直してもっと柔軟にすべきだという意見も出ている。
 いずれにしろ、ラングドックの良質のメルローやカベルネはボルドーの安物ワインの半値で手に入る。ボルドーワインの質的な底上げのために、これらをブレンドしようという誘惑が起こるのは無理からぬところだ。
 一方、AOC制度とボルドーのブランドイメージによって、「ボルドーワイン」というだけでラングドックの2倍の価格で販売できる実態も事を複雑にしている。
 今回の裁判とは直接関係ないが、フランスではシャトー・ぺトリュスの偽ボトルの横行も話題になっている。フランスのワイン雑誌によると、シャトー・ぺトリュスでは偽ボトルの製造ルートが存在することを承知しており、82年産、89年産、90年産の偽物を確認したという。
 この偽ペトリュスをつかまされた、パリのネゴシアン、フランソワ・マノ氏は108本分、総額約1300万円の払い戻しを販売側に求めている。マノ氏は、「大シャトーはスキャンダルへの発展を怖れて、偽造者を告発することをためらっている」と、この問題の背景について述べている。
 さらに、古いボトルへのワインの注ぎ足しも問題になっている。2000年の秋にパリで1900年産のマルゴーとラフィットが競売会にかけられたが、競売にあたっての調査で、このボトルへの注ぎ足し方法に疑義のあることが判明したのだ。
 50年〜100年を経たボトルはコルクが劣化しワインの目減りが激しくなる。このため、目減り分を注ぎ足し、新しいコルクを打栓する。この場合、シャトーの責任者が立ち会うのが原則だが、古いボトルについては若返らせることを理由に、別のミレジームのワインを注ぎ足すのが業界では普通になっている。しかし、これがどの程度の範囲で許されるのかは当事者の判断によっているのが実情だ。問題のボトルには60年代のヴァンドターヴルが注ぎ足されたという指摘もある。様々な面でワイン関係者のモラルが問われている。
 
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